ワンルームマンションをお勧めしない理由

収益物件を選ぶ際、特にサラリーマン投資家にとって重要なのは「安定性」と「長期的な運用効率」です。その観点からすると、ワンルームマンションは収益物件には適していないと考えられます。本記事では、ワンルームマンションをおすすめしない理由を3つの観点から解説します。

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入退去の頻度が高く、修繕サイクルが短い

ワンルームマンションの入居者層は主に学生や単身赴任者といった短期的な居住者で構成されており、入退去の頻度が非常に高い傾向があります。これにより、壁紙の張り替え、床のメンテナンス、設備の修繕など、退去に伴うリフォームが頻発します。さらに、修繕頻度が増えると、空室期間が長引くことにも直結します。賃貸市場では、修繕や清掃中の物件は入居者を募集できないため、物件の収益効率が低下します。一方、ファミリー物件の場合、10年を超える長期間にわたり同一の入居者が住むケースが一般的であり、修繕頻度が少なく空室期間も短縮される傾向にあります。


賃料に占める修繕費用の負担割合が高い

修繕費用の発生は、入退去時に限りません。入居者から挙げられる修繕要望には、エアコンの故障、給湯器の故障、漏水などさまざまなものがあります。これらの修繕は、ワンルームマンションでもファミリー物件でも費用面では大差がありません。

たとえば、年間50万円の家賃収入があるワンルームマンションで、年間10万円の修繕費用が発生すると、家賃収入に占める修繕費用の割合は20%となります。同じ修繕費用でも、年間120万円の収益があるファミリー物件ではわずか8.3%にとどまります。このように、修繕コストの影響はワンルームマンションでより深刻です。

さらに、ワンルームマンションの賃料はファミリー物件よりも低いため、修繕費用が収益に与える影響が大きくなります。たとえば、設備の更新や外壁修繕などの大規模な修繕費用は、ファミリー物件とほぼ同等にかかる場合が多いにもかかわらず、賃料収入に対する負担割合は高まります。

また、修繕費用だけでなく、共益費や管理費の比率も賃料が低い物件では相対的に高くなります。たとえば、月額家賃5万円のワンルームマンションで毎月5000円の管理費がかかる場合、家賃収入の10%が管理費として消費されます。一方、月額家賃15万円のファミリー物件では同じ管理費が占める割合は3.3%に過ぎません。このように、ワンルームマンションは運用効率が悪くなる構造的な問題を抱えています。

さらに、競争が激化する都市部では、賃料を維持するための設備更新やリノベーションの頻度が増える傾向にあります。これにより、収益を確保するために多額の追加投資が必要になる場合も少なくありません。


賃貸客付け時の競合が多く、売却時の選択肢が限られる

ワンルームマンション市場は非常に競争が激しいため、空室リスクが常につきまといます。都市部では、同一エリア内に数多くの競合物件が存在し、条件の良い物件が多い中で入居者を確保するためには賃料を引き下げる必要が生じたり、フリーレントを提供しなければならないこともあります。類似物件が多い場合、賃貸客付け仲介会社への広告費用(ADと呼ばれます)を数か月分積まないと積極的に動いてもらえないこともあります。特に築年数が経過した物件では、築浅物件や新築物件との競争にさらされ、空室率が上昇するリスクが高まります。

また、売却時には購入者が投資家に限られるという制約があります。投資家は物件の収益性を厳しく評価するため、収益率が低下した物件は売却が難航する傾向にあります。一方、ファミリー物件は投資家だけでなく、実需層である「自ら住むための物件を探している家族層」にもアピールできるため、売却の選択肢が広がります。たとえば、学校区や周辺環境が優れたファミリー物件は、家族層にとって魅力的であり、売却時の市場競争力が高まります。

このように、ファミリー物件は運用期間中の安定性だけでなく、出口戦略の柔軟性にも優れている点が投資家にとってのメリットです。


まとめ

ワンルームマンションは、初期投資が比較的少なく運用が手軽に見えるため、多くの初心者投資家にとって魅力的に映るかもしれません。しかし、入退去頻度の高さによる修繕費用の負担増、賃料に対する運用コストの負担割合の高さ、競争激化による空室リスク、そして売却時の選択肢の制限など、長期的な視点で見ると多くのリスクを抱えています。

一方で、ファミリー物件は安定性が高く、長期的な収益性に優れるだけでなく、売却時の選択肢も広がります。不動産投資を成功させるには、初期費用や利回りだけでなく、安定性や出口戦略を含めた長期的な視野での評価が重要です。投資の最終目的を明確にし、物件選びの際にはこれらの観点を十分に考慮することをお勧めします。

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