サラリーマンが収益物件を取得する際の借入金に対するマインドセット

不動産は高額であるため、不動産の購入に際して、自宅購入であるにせよ、収益物件の購入であるにせよ、一般的には融資を利用します。

サラリーマンとして収益物件を取得しようと考える際、まず認識しておくべき重要な点は、自己居住用物件も収益物件も居住用不動産という点では同一の性質を持つものの、収益を生むかどうかという決定的な違いがあることです。それゆえ、自宅居住用物件購入時と収益物件購入時における借入金の性質も当然ながら異なります。収益物件を購入したことがない人は、自己居住用物件と収益物件そのものの違い、さらには物件購入に際して発生する借入金の性質の違いを理解していないことが多いです。ここでは、自己居住用物件および収益物件購入時に発生する借入金に対する理解を深めていただくために、それぞれの物件購入時に発生する借入金の性質の違いについて説明します。

目次

自己居住物件について

まず、自己居住用物件は収益を生み出しません。物件取得および維持にかかる費用は、最終的に全額自己負担する必要があります。したがって、住宅ローンを利用して自宅を購入する場合、借入金総額に加え、借入金に対する利息も加えた金額を返済する必要があります。さらに、固定資産税や修繕費用などの維持費も、保有している期間中、継続的に発生します。自宅購入におけるリスクは、費用負担が個人の生活費や収入に直接依存しており、収入の減少や予期せぬ支出が発生した場合、返済に支障が出るという点です。そのため、「借金は悪いもの」や「できるだけ借入金は少なくしたい」という意識が生まれるのは当然のことです。

収益物件について

一方、収益物件で発生する借入金は、その物件から得られる家賃収入をもとに返済を行う仕組みとなります。これは、物件そのものが返済の原資を生むという特性を持ち、言い換えれば、物件自体が経済的な自立性を持つべきだということです。これは企業が借入金を用いて事業を拡大するのと同様です。別の記事でも述べていますが、サラリーマンが収益物件を取得することは、賃貸不動産「業」を営むことと同義です。個人事業であったとしても、自身の生活会計と収益物件に関する会計は分けて考えるべきです。少なくとも不動産賃貸業に関しては、「借金は悪である」という意識を改めてみてはいかがでしょうか。企業が金融機関から融資を得て事業を行うのは、少ない資金で大きな事業を行えるため、自己資本を効率的に利用できるからです。つまり、自己資金だけでは得られない大きな収益を見込むことが可能となります。このような借入金を活用する手法を「レバレッジ」(てこの原理)といいます。

レバレッジ活用のメリット、およびリスク

レバレッジ活用のメリット

レバレッジを活用するメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  1. 少ない資金で大きな事業を実現
    少ない自己資金で大きな事業を行えるため、自己資本を効率的に利用できます。これにより、自己資金だけでは購入できない大型物件を取得することが可能になります。
  2. 自己資本利益率の向上
    借入金の利息率が収益物件から得られる実質利回りより低ければ、その差額が利益として残り、自己資本利益率(ROE)が向上します。
  3. 税負担の軽減
    借入金の利息は経費として扱われるため、課税所得が減少し、税負担を軽減できます。ただし、税負担軽減を主目的として借入金を増やすことはお勧めしません。あくまで副次的なメリットとしてお考えください。

レバレッジのリスク

一方で、レバレッジには以下のようなリスクも存在します。

  1. 返済義務と収益の不確実性
    借入金には返済義務があるため、空室の発生や想定外の修繕費の増加などにより予定通りの収益が確保できない場合、賃貸事業の収支が悪化します。その結果、自己資金を投入して借入金の返済を補う必要が生じることがあります。
  2. 金利上昇リスク
    変動金利で借り入れを行った場合、金利が上昇すると利息負担が増加し、収益が圧迫される可能性があります。
  3. 財務健全性の悪化
    借入金依存度が高くなりすぎると、財務の健全性が損なわれ、信用力の低下や最悪の場合、倒産リスクが高まる可能性があります。

まとめ

不動産購入には一般的に融資が利用されますが、自宅用物件と収益物件では借入金の性質が異なります。自宅用物件は収益を生まず、購入費用や維持費を全額自己負担する必要があるため、収入減少や予期せぬ出費がリスクとなります。一方、収益物件は家賃収入を返済の原資とするため、物件が経済的自立性を持つことが求められます。これを活用することで少ない資金で大型物件を購入し、自己資本利益率を向上させることが可能です。また、借入金利息を経費として扱えるため税負担軽減も期待できます。

しかし、レバレッジにはリスクもあります。空室や修繕費の増加で予定通りの収益が得られない場合、自己資金で返済を補う必要が生じます。さらに、金利上昇による利息負担の増加や財務健全性の悪化による信用低下、倒産リスクも考慮が必要です。メリットとリスクを理解し、収益物件を事業として捉えることが重要です。

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