日本の空き家が近年、海外の投資家や個人から大きな注目を集めています。その背景には、日本特有の不動産市場の状況や文化的要因、さらに海外の視点から見た投資機会が大きく関わっています。本稿では、これらの理由を詳しく解説し、特に日本で活躍するスウェーデン出身のDIY愛好家アントン・ウォールマン氏の事例を交えながら、日本の空き家市場が抱える可能性について考察します。
日本の空き家問題の現状
日本では少子高齢化や都市部への人口集中の影響により、地方を中心に空き家が急増しています。総務省の2023年の調査では、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。この問題は社会的課題であると同時に、新しい投資やリノベーション事業の可能性も秘めています。
海外からの空き家が注目される理由
手頃な価格
空き家の多くは非常に低価格で購入でき、特に海外の主要都市と比較するとその差は顕著です。地方に行けば300万円など極めて低価格で売り出されている、という事実です。海外投資家にとって先進国の不動産がこの価格で売り出されているのは驚きです。このような低価格が魅力となり、多くの外国人が日本の空き家市場に参入しています。
※ここでいう不動産購入は、ニセコや白馬のようなリゾート地での購入ではありません。日本各地にある所謂田舎です。
文化的・建築的魅力
日本の伝統的な家屋や建築美は、海外ではユニークで希少なものと評価されています。和室の意匠や古民家の佇まいは、西洋のモダンデザインとは異なる独特の魅力を放っています。
海外の人が日本の空き家を知る術
観光地や都市近郊にある空き家は、リノベーションを経て賃貸や民泊として運用することで、高い収益を期待できます。そして、ノベーションを経て賃貸や民泊として運用する手法は、海外のマスメディアやネットメディアで多数紹介されています。
こちらは、イギリスBBCの動画です。
投資機会へのアクセス
まずは、世界中のどこからでもアクセスできる日本の空き家を紹介するサイト。

日本国内在住の外国人で空き家に興味のある人に向けては、セミナーも開催されています。このサムネイルからお分かりいただける通り、大勢の外国人が参加しています。当セミナーは、年2回、春・秋にそれぞれ2日ずつ開催されています。
アントン・ウォールマン氏の事例
スウェーデン出身のアントン・ウォールマン氏は、日本の空き家をリノベーションし、その過程をYouTubeチャンネル「Anton in Japan」で公開しています。彼は築86年の古民家を約300万円で購入し、自ら改修を行いました。この取り組みでは、日本の伝統的な建築様式と北欧デザインを融合させた「ジャパンディ」スタイルを採用し、多くの支持を集めています。
彼の活動はDIYの枠を超え、日本の空き家の魅力を世界に発信するものとなっています。アントン氏は「日本の伝統的建築の美しさを現代に活かす」ことを目標にしており、購入した家を新たに建て直すのではなく、元の構造や雰囲気を可能な限り維持しながらリノベーションしています。
また、彼の書籍『Free Houses in Japan』は、日本で空き家を取得し活用する方法を指南する実用的なガイドとして注目されています。このような彼の取り組みは、日本の空き家市場における新たな価値創造のモデルケースとして、多くの海外投資家に影響を与えています。
今後の課題と展望
日本の空き家が海外で注目される背景には、手頃な価格、文化的価値、投資機会といった魅力が存在します。さらに、アントン・ウォールマン氏のような人物が実践するリノベーション事例は、空き家問題解決の新たな可能性を示しています。これらの取り組みを通じて、日本の空き家市場は地方活性化や国際交流の場として、ますます重要性を増していくでしょう。
空き家市場の更なる発展には、適切な管理や情報提供、法的なサポート体制が不可欠です。特に外国人購入者にとっては、言語の壁に加えて日本の不動産関連法規の理解、および契約手続きの複雑さが課題となるため、専門的なコンサルティングサービスのニーズがさらにニーズが高まってくることが想定されます。
また、さらに問題となるのは、海外在住者人は、日本人であっても日本国内に銀行口座を持つことが難しい点です。一部の金融機関で、非居住者向けの銀行口座サービスが提供されていますが、郵便貯金を含め多くの金融機関が口座開設を拒みます。収益物件を保有した後は、必ず金銭出納が発生します。個人名で銀行口座が持てないことは、空き家への投資機会に対する障壁となり得ます。