日本人が米国で収益不動産をもつメリット、デメリットとは?

米国での収益不動産投資は、日本では得られない利回りや分散投資の機会を提供する一方で、管理や税制面での課題も多くあります。特にサラリーマン投資家にとっては、限られたリソースの中でいかにリスクを管理しつつ、収益を最大化するかが重要です。ここでは、日本人が米国で収益不動産を持つメリットとデメリットを解説します。

目次

メリット

通貨分散と為替メリット

複数の国や地域に資産を持つことは、長期的な資産形成において非常に重要な戦略です。

米国不動産を購入することで、米ドル建ての資産を持つことができます。これにより、日本円の価値が下がった場合に資産の目減りを防ぐ「通貨分散」が実現します。また、円安時に資産を売却すれば、為替差益を得られる可能性もあります。このように、日本円以外の通貨で資産を保有することは、資産形成におけるリスク管理の一環として有効です。

米国で収益不動産を持つことは、米ドル建てで賃料を得ることを意味します。日本に住みながら米ドル建ての収入を得られるのも魅力です。

資産価値に加えて賃料の上昇可能性

米国の都市部や成長市場では、不動産価格が上昇傾向にある地域があります。人口増加や産業の発展によって需要が高まるエリアでは、購入した物件の価値が時間とともに上がる可能性があり、キャピタルゲインを狙う投資戦略が有効です。

さらに、米国の収益不動産では賃料上昇の可能性も秘めています。日本では長らく賃料の上昇とは無縁でした。この感覚からすると、毎年賃料が上がるのは驚きです。しかも、賃料決定の主導権が家主側にある点も見逃せません。日本では賃借人の権利が強く賃料交渉が難しい状況と比較すると、主導権の有無の違いを強く感じます。

永住権取得の手段として

永住権や長期滞在ビザを取得するための手段として、不動産投資が利用されることがあります。**EB-5(Employment-Based Immigration, Fifth Preference)**は、アメリカ合衆国の永住権(グリーンカード)取得を目的とした雇用ベースの移民ビザの一つで、「投資家ビザ」とも呼ばれます。

EB-5は不動産投資そのものを指しているわけではありませんが、ホテル、マンション、商業施設などの不動産開発プロジェクトがEB-5プログラムの投資対象になることが非常に多いです。不動産開発を行えば、EB-5の要件である「10人のフルタイム雇用創出」を満たすのが容易だからです。


デメリット

英語

そもそも論ですが、米国の不動産を持つ上で、英語は必須です。物件購入時から、物件保有時の建物・賃貸管理会社とのやりとり、そして米国における確定申告は基本的に英語となります。また、米国における納税者番号ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)の取得に際しては、IRS(Internal Revenue Service、アメリカ合衆国の内国歳入庁。日本の国税庁に相当)との交渉が必要になる場合もあります。そのため、英語に自信のない方には、米国物件をお勧めできません。

文化の壁

契約書や法律文書が英語で作成されていることは当然として、専門用語の存在も見過ごせません。また、現地の商習慣や文化を理解していないと、トラブルや誤解が生じやすいです。これらを乗り越えるためには、既に米国で収益物件を保有している人との情報交換を行い、対処方法を学ぶことが効果的です。

物件選定の壁

物件選定のための現地渡航自体が、距離的・時間的な壁になります。さらに、住んだことのない地域では、そのエリア特有の事情や特性を理解するのは難しいでしょう。米国には「スクールレイティング」という学区ごとのランキングが存在します。この情報を活用することで、該当地区のおおよその位置づけを把握することが有効です。

為替リスク

米ドル建てで資産を保有するため、為替変動の影響を受けます。円高が進むと、ドル建て資産の円換算額が目減りする可能性があります。ただし、為替リスクは不動産そのものが原因となるリスクではなく、外部的な要因に起因するものです。

法律・税制の複雑さ

米国の不動産市場は州ごとに法律や税制が異なります。たとえば、固定資産税やキャピタルゲイン税が日本よりも高い場合があります。また、日本国内での確定申告においても、海外不動産投資特有の手続きが必要になるため、海外不動産について詳しい税理士など、専門家のサポートが不可欠です。

日本居住者は、全世界課税が適用されるため、米国で得た不動産所得についても日本で税務申告を行う必要があります。

税理士であれば誰でも良いというわけではありません。医師が内科や外科などの専門分野を掲げているのと同様、税理士にも専門分野があります。海外不動産について詳しい税理士は、そもそもの絶対数が少ないため、適切な専門家を探すこと自体が難しいのが現状です。

物件管理の課題

日本の収益物件でも、多くの家主が管理会社に建物管理や賃貸管理を委託しています。同様に、米国の物件でも自分自身で管理するのではなく、現地の管理会社に建物や賃貸管理を委託するのが一般的です。日本国内でも管理会社のサービスレベルにはばらつきがありますが、米国でも同様で、管理会社のサービス品質に大きな差があります。質の高い管理会社に業務を委託しないと、賃貸経営がスムーズにいかない可能性があります。

融資の壁

収益不動産を購入する際に融資を利用することは、日米で共通の手法です。ただし、米国物件を購入する際に利用できる金融機関は限られています。一部の金融機関では、米国の収益不動産購入のための融資を提供していますが、その際、取得する物件に抵当権を設定するのではなく、保有する日本国内の不動産に対して抵当権を設定します。

まとめ

米国で収益不動産を持つことは、通貨分散や高い利回り、資産価値の上昇といった多くのメリットをもたらします。一方で、為替リスクや法的・税制上の複雑さ、管理の課題など、多くの注意点があります。特にサラリーマン投資家にとっては、時間的・金銭的なリソースが限られている中でこれらの課題をどのように克服するかが重要です。

成功するためには、以下のポイントを意識することが必要です:

  1. 信頼できる現地の専門家(税理士、管理会社)との連携。
  2. 投資対象地域の徹底的なリサーチ。
  3. 為替リスクを考慮した資産計画。
  4. 投資目的に応じた明確な戦略の策定。

米国不動産投資は魅力的な選択肢ですが、リスクとメリットを正しく理解し、慎重に判断することが成功への鍵です。

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